洗練された世界観、メンバー4人が求めるサウンドと、その最大値を求めるストイックな音作り、スタイリッシュな佇まいとクールなエモーション、確かなオリジナルの感触、4人組バンド、I Don’t Like Mondays.。デビュー10周年となる2024年、そのリリース第1弾となるDigital Single『New York, New York』。記憶を駆け抜ける疾走感のバンドサウンド、失恋しメランコリックな男の心情を描いた英語詞、ボーカルYUが青春時代を過ごしたNew Yorkへの慕情が詰め込まれている。独自の音楽世界の制作舞台裏、メンバーそれぞれの楽曲解釈とアプローチについて語ってもらい、オリジナルサウンドの構築、表現のポイント、I Don’t Like Mondays.の音楽世界と今後を探っていきたい。
デビュー10周年Single『New York, New York』
――I Don’t Like Mondays.は、今年デビュー10周年ということで、その2024年のリリース第1弾となる作品が『New York, New York』という楽曲です。記憶を駆け抜けるような疾走感のバンドサウンドに、失恋しメランコリックな男の心情を描いた英語詞が乗っています。歌詞はボーカルYUさんが青春時代を過ごしたニューヨークでの思い出がもとになっているとのことですね。すでに公開されている映像Studio Rec Footageも、スタジオでのライブレコ―ディンク風景がモノクロの映像で表現されており、ニューヨークのような感覚も覚えました。まず、10周年第一弾しとしてなぜこの曲なのか、どのようなステップで制作されたのか、教えてください。
YU(Vo)●今回の曲のスタートは、まず「New York」というタイトルで行こう、と決めたのが一番最初です。もともと僕が、いつか「New York」というタイトルの曲を書きたいなあ、と思っていたということがあります。ずっとそう思っていたのですが、これまでそれにフィットする曲が無くて、なかなか実現しなかったんです。でも、今回、初めにトラックが出来た段階で、この楽曲に「New York」というタイトルをつけたい、「New York, New York」というタイトルをつけたら自分的にすごく好きな曲になるなぁと思って。そこがこの曲の制作のスタートですね。
――実は、ラジオ番組でYUさんが、この曲は「ニューヨークのことを歌った曲ではない」という趣旨の発言をしていたと耳にして「えっ? 『New York, New York』って、タイトルで、曲中でも〈New York, New York〉って二回も繰り返して歌っているのに、違うの?」みたいな話にならないかなと思ったんですけど(笑)。
YU(Vo)●あはははは(笑)。確かにややこしいかもしれないですね。説明すると、タイトルを『New York, New York』と決めて、いざ歌詞を書こうとしたときに、一番悩んだのは、ニューヨークは、僕が青春時代に過ごした場所ではあるのですが、そこに今いるわけではないということです。今、住んでいないのにニューヨークで今生活しているような視点で歌うというのは、作り話になってしまうし「ニューヨークのコスプレ」しているみたいな感じがして。コスプレではなくて、自分の本心として歌えるかな、というとこから、主人公がニューヨークにいたらちょっと違うなと。そこで最終的に僕がたどり着いた答えが、ニューヨークの思い出を歌うという設定です。僕が過ごしたときに感じたニューヨークっていうもの、よくも悪くも、ポジティブもネガティブも含めて、言葉で表せない感情が入りまじった情景なのですが、そういうニューヨークでの感情を思いす象徴的な瞬間って何だったんだろう? と思ったときに「彼女の唇はニューヨークを思い出させた」という詞の一行が思い浮かんだんです。それが気持ちを乗せて歌える部分だなぁと思って。ですから、ニューヨークの歌というよりは、ニューヨークという言葉から僕が想いを馳せるもの、それを感じる瞬間、を歌っているというのが、正しいです。
――そうだったんですね(笑)。楽曲は、ほぼ英語詞で「彼女の唇はニューヨークを思い出させた」という部分も、曲中では〈Her lips reminds me New York〉と英語詞になっています。物語としては「ニューヨークでの失恋」を今も苦く切なく懐かしい思い出として持ち続けている主人公の心情が描かれています。曲中、日本語歌詞で〈もうどうしようもないくらいだ〉と歌う部分も印象的で、英語がわからなくてもサウンドとその歌詞、そのボーカルのニュアンスで、歌の感情はつかめますよね。
YU(Vo)●「コスプレ」にならなくてよかったです(笑)。実を言うと、歌詞の主人公がニューヨークにいる設定というか、ニューヨークにフォーカスした詞も書いたんですけど、なんか歌ってみて、ぜんぜんしっくり来なくて(笑)。今回の作品になったような主人公の登場が、今の自分のモード(気分)的にも一番しっくりくるなと思いました。
――この『New York, New York』が、バンドサウンド主体であったり、メンバーの「思い出」「記憶」という、時間軸として過去にベクトルを向けている内容なのが、10周年YEAR第一弾の作品という点で、何か象徴的だなとも感じました。
YU(Vo)●そうですね、そんなに意識はしていないですけど、そういう捉え方をしていただいても大丈夫です(笑)。
――その後はどういう形で制作していったんですか? そもそもI Don’t Like Mondays.の制作スタイルは、全員で集まってコンセプトを決めて、その場で打ち込みで音を確認しながら構築していくというコライト(Co-Write)方式だと思うんですが、今回もみなさんで集まってコライトしていった形ですか?
YU(Vo)●いつもだったら四人でDTMで作っていくところを、今回はもっとラフに作ってもいいんじゃないかみたいな雰囲気がバンド内にあって…。
――じゃあ、いつもとちょっと違う制作方法で?
YU(Vo)●そうですね。説明しますと、まずドラムのSHUKIが自転車に乗っているときにたまたま思いついたメロディがあったんですね。それを彼が作曲部屋でひとりでDTMで制作しているところに、ベースのKENJIが偶然訪ねて来て「曲作ってるなら、じゃあ、ふたりで作っていってみる?」となって、ある程度の音源として形にしていたんです。それで、今回のリリース曲の制作がスタートして、候補のデモ曲にこの音源もあって「これくらい力が抜けたというか、ラフなものを広げていくのも、今自分たち10周年だし、おもしろいんじゃない?」ということで、この曲を進めてみようとなりました。
――今回も、これまでとおり、みんなで集まって作ったのかな?と思っていました。
YU(Vo)●こういうバンドサウンド主体の楽曲をみんなで集まってDTMで制作するというのを以前、試したことはあるんです。「ロックぽいのをやりたいね」って、みんなで集まってあれこれ考えながらやったんですけど、そのときは、うまくいきませんでしたね(笑)。ボツになりました。
――(笑)。そういうケースもあったんですね。ここで改めて『New York, New York』について楽曲のイメージを共有したいのですが、8ビートのバンドサウンドで、駆け抜けるようなテンポ感ではあるけれど、大人の装いというか、きちっとグリップしてコントロールされたグルーヴ感で、ドラムと重ねる単音のギターリフはすこし緊張感も帯びて、そこにベースが絡み、空間系のエフェクトの効いたギターも色どりと広がりを与えています。その上で、ボーカルは「自然体」「リラックス感」「けだるさ」というニュアンスを纏いながら物語を紡いでいきます。サウンド全体のビート感とボーカルのニュアンスがスタイリッシュで、どこかに連れて行ってくれる、連れ出してくれるような、当時の情景に包まれるような、そんな感覚を覚えます。I Don’t Like Mondays.らしい雰囲気がします。
全員●ありがとうございます。
――では、さらに具体的にどんなアプローチで、I Don’t Like Mondays.らしい音世界を作り上げていったんでしょうか?
(インタビュー=吉田直樹(OUT of MUSIC))
この記事の続き(1万4000字 ロングインタビュー)は、現在発売中『OUT of MUSIC 86』に掲載中です。ご購入ご希望の方は、全国書店、CDショップ、ネットショップ、または下記画像リンクからお求めください。