繊細かつ迫力のある感情表現で、多くの音楽ファンを魅了する林部智史。オリジナル曲と同時にカバー曲に情熱を注ぐ、彼のカバーアルバム第二弾『カタリベ2』がリリースされた。オリジナル曲へのリスペクトとともに、原曲アレンジを最大限に尊重したこだわりのアレンジと、林部智史だからこそ表現できる自身の音楽性を重ね合わせ、さらに大きな音楽世界を描き出している作品だ。林部智史のカバーとは何なのか? その意味、理由と魅力についてじっくり話を聞いた!
オリジナルアレンジに対するこだわりとリスペクト
――林部智史さんのカバーアルバム『カタリベ2』がリースされました。2018 年リリースの『カタリベ1』以来、6 年ぶりとなる待望のカバーアルバムです。『PIECE OF MY WISH』(今井美樹 / 1991年)をはじめ、林部さんが生まれた1988 年以降にリリースされた楽曲、全12 曲が収録されています。多くのみなさんの記憶に残る名曲たちを、林部さんの声、歌、表現で聴くことができる、そういう聴きどころ、楽しみに満ちたカバーアルバムです。
●ありがとうございます。
――カバーする原曲に対する林部さんのリスペクトや、原曲の雰囲気、良さをさらに広げるアプローチが好きで、今回も楽しみにしていました。個人的には、アレンジや曲のキー(その楽曲の基準、中心となる音)もオリジナルにして欲しい派でして(笑)。これは個人的な意見、好みなので、これが正解ということではないのですが、僕は「カバーは原曲キーじゃないと嫌です」派なんです(笑)。「原曲キー警察」と言ってもいいくらい。「あ、キー下げて歌ってる」ってすぐ言っちゃうタイプで。
●あははは(笑)。でもそれわかります、僕も「原曲に忠実派」ですよ。キーもそうですし、アレンジも基本的には、原曲を尊重してほしい派です(笑)。
――あ、やっぱりそうでしたか(笑)。というのも、林部さんのカバーを聴くとすごく原曲のイメージが尊重されていて、キーの違和感も感じないんですよね、原曲キーで歌ってる感じなんです。でもよく聴くと「あれ? キー変えてる」って気付いて…。
●それって「男女の差」と思うんですよ。
――「男女の差」?
●男性ボーカルの曲を男性がカバーするとき、キーが違うと目立つんです。キーを下げたりすると「あ、下げてる」と、指摘されちゃうんです。だけど、女性ボーカル曲を男性がカバーすると、それが紛れるんですよね。「女性から男性」という変化が目立つので、印象として、キーの変化が目立たない。
――へぇー。そうなんですね。ホント、キーの違和感がないです。
●ありがとうございます。原曲っぽくしてるというのもあるんですけどね(笑)。
――原曲の魅力をきちんと汲んでいただいて、原曲のファンの方々も納得のカバーだと感じました。ではカバーアルバム『カタリベ2』の内容について、いろんな視点から伺いたいのですが、まず一曲目は『PIECE OF MY WISH』(今井美樹 / 1991年)です。
●これは、僕がデビューのきっかけになった曲で、コンサートでも歌わせていただいているし、アマチュア時代から歌わせていただいている曲です。僕はもともと『THEカラオケ★バトル』(テレビ番組)から出ているので。
――そうでしたね。
●僕は『あいたい』という楽曲でデビューさせていただいたのですが、その『あいたい』を僕が歌わせていただくことになったのも『PIECE OF MY WISH』がキッカケだったんです。当時、『あいたい』の楽曲ができて、女性曲として女性の歌い手を探していたらしいんですけど、僕が歌った『PIECE OF MY WISH』を音楽の関係者の方が聴いてくださって、この男性ならいいかもということで、「歌いませんか?」とお話をいただいたんです。
――そうだったんですね。
●今思うと『PIECE OF MY WISH』の歌詞の内容も、デビューしたいと思っていた当時の自分の気持ちにあっていたし…。
――『PIECE OF MY WISH』という歌は、すごく寄り添ってくれて、支えてくれて、夜明けは必ず来ると信じさせてくれる、前を向く力を与えてくれる、とても素敵な歌で、僕も大好きです。「音楽の力」そのものを象徴するような曲ですね。
●そうですよね。〈信じていて あなたのことを〉という歌詞も、自分を信じるということに置き換えて歌っていました。そう思うと運命的な出会いと感じた曲でした。声の性質的にも今井美樹さんに似ている部分もあったかと思います。
――そうだったんですね。『THEカラオケ★バトル』のお話って、実はあまりしたことなかったですよね。こちらも特にしようとは思わなかったんですけど(笑)。
●あははは。気を遣っていただいてましたかね(笑)。『THEカラオケ★バトル』の印象を持ってくださる方もいらっしゃって、それはありがたいことですが、オリジナル曲を歌う自分も知っていただけたらさらに嬉しいなと思ってはいましたけど(笑)。
――個人的には、カラオケのイメージは特にないですし、ま、あえて言うなら、インタビューの発言がまあまあ過激だなと言うイメージはありますけど(笑)。たまに「コメントが使いづらいなぁ」って(笑)。
●あははは(爆笑)。
――前作『カタリベ1』から今作『カタリベ2』まで6年空いてリリースということですが、これは何か理由があるんですか?
(インタビュー・写真=吉田直樹(OUT of MUSIC))
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