Album『RAINBOW』。その名の通り“虹”をテーマにした今作には、赤・橙(オレンジ)・黄・緑・青・藍・紫にちなんだ7曲(+ボーナストラック『虹めいて(スペシャル・バージョン)』)を収録。「赤」をイメージとして先行リリースされたシングル『La Rouge』を手がけた松井五郎(作詞)、林哲司(作曲)をはじめ、阿木燿子、宇崎竜童、マシコタツロウ、松本俊明、Minnie P.、来生たかお、来生えつこ他、豪華作家陣が集結して完成した鮮やかな“虹”について、各曲に込めた想いと制作エピソードを語ってもらった。
自ら作詞作曲、藍色をイメージした『心の傘』
――7色の楽曲が揃ったアルバム『RAINBOW』。林部さん自ら作詞作曲された『心の傘』のように、今年2月に開催した『林部智史 7th Anniversary Concert~虹めいて~』ですでに披露していた楽曲もありますし、“虹”がやっと完成したという感覚でしょうか。
●そうですね。基本的に僕の活動の1年の流れって、まず周年コンサートをやって、そこから、1年間どんなことをやろうかな?という案を膨らませていくことが多いんですよ。なので、昨年の夏頃に阿木燿子さんと宇崎竜童さんにお会いして『虹めいて』を作っていただいた時は、7周年は“虹”をテーマにやろう!とまでは考えていなかったんですが、7周年のコンサートでは、今僕が持っている楽曲の中から7色に当てはまる楽曲を選んで、虹メドレーとして歌ってみようと思いまして。それを機に、1年を通して“虹”を膨らませていけたらいいなと、アルバム制作を始めましたね。当初は1曲ずつ違う作家さんにお願いしてみたら、歌詞のテーマも、ジャンル的な曲の色も変わってくるんじゃないかなと思って、7曲×2(作詞・作曲)で14人の方にお願いできればいいなと思っていたんですけど、最終的には僕が手掛けた曲も加わって、12名の方に作詞作曲していただくことに。アレンジもできるだけいろいろな方の色を加えてほしくて、お声掛けさせていただきました。
――前回の取材で(OUT of MUSIC vol.81)、艶っぽい赤を感じる先行曲『La Rouge』(作詞:松井五郎 作曲:林哲司 編曲:西村真吾)は、松井さんご自身が赤を選択されたとおっしゃっていましたね。
●はい。松井さんに関しては、僕が選んだ色ではなく、「7色のうち、何色の曲を書いていただけますか?」と伺ったところ「赤で」とおっしゃったので、赤の曲を作っていただきました。あと、藍色をテーマにした『心の傘』は、7周年に向けて自分でも先に曲を作っておきたいなと思って制作した楽曲なんですが、藍色はどの作家さんも選びづらいだろうなと思って。
――それはなぜ?
●どの色が一番印象付けるのが難しいかな?って考えた時に、特にパッとイメージが浮かびづらい色が藍色だと思ったんです。青もあるので、違いを出しづらいのもありますし。例えば、宇宙の色とか真夜中の色とか、深海とか? そういうイメージは湧くんですけど、それも模索してようやく浮かんだものなので、きっと作りづらいだろうなと。それで先に取っておきました(笑)。もし松井さんが最初に「藍色」っておっしゃっていたら、また違う色の曲を作ろうと思っていたんですけど、そんなこともなく。結局、他の作家のみなさんも藍色以外の色を選ばれて、藍色だけが残ったので、僕の予想通りでしたね。
――『心の傘』というタイトルからバラードを想像する方もいらっしゃると思うのですが、土砂降りを連想させるようなギターロックで新鮮でした。林部さんがこの曲で表現したかった“藍色”とはどのようなものですか?
●いろいろ考えた結果、この曲は藍色の色彩心理である“探究心”に着目して作っていきましたね。
――青が“冷静”とか、赤が“情熱”みたいなものですか。
●そうそう。それで藍色はなんだろう?って調べたら、“探究心”という言葉が出てきたので、自分自身を見つめる歌を書こうと思いました。それと、僕の中でロック=藍色のイメージがあって。
――どちらかというと、ロックって赤っぽくないですか? ロック系のライブに行くと、よく炎が上がってるし(笑)。
●あははは。確かに、昨年のクリスマスライブではロックを赤で表現しました。でも、赤だとちょっと鮮明すぎるし、歪んだギターの音が藍色っぽい気がしたんですよね。爽やかな青ではなくて、哀愁を帯びたギターが藍色っぽいなと。そういう経緯があって、これまではピアノのイメージが強い曲が多かったと思うんですが、今回はギターならではのコード進行や手法にこだわって作りましたね。
――<このままで幸せさ なあそうだろう?誰か>と問いかけた後の泣き叫ぶようなギターソロも、今までにはない表現だと感じましたが、これも1つの探究だったんでしょうか。
●まさにそうですね。詞と曲を同時進行で作り上げていたんですが、これはただ美しい曲ではないと思ったので、歌はもちろん、演奏面でも心の叫びを表現したいなと思っていました。ここまでギターを歪ませるのは初めてだったんですけど、レコーディング中も「もうちょっと歪ませてください」とリクエストしたりしましたね。
――(吉田編集長)この曲のリズムは、少し跳ねている基本3連リズムだと思うんですけど、曲の最後、盛り上がり部分で、ドラムのソロというか、激しいフィルイン(タムやスネアなどをたたいてアクセントをつける)があるんだけど、3連リズムのソロで暴れてるのカッコいいですね。ドラマーの人、大変かもだけど。
●あれはドラムの人が自ら「もうちょっとやったほうがいい」って言ってくれたんですよ。「もっと振り切っていこう」って。
――1枚を通して聴くと、それが良いスパイスになっているなと。
●“虹”というコンセプトがあることで、幅を振れるところがありますよね。例えば黄色の『SUNNY-SIDE UP』も、愛らしくコミカルな曲調だから、普通のアルバムにポンっと入っていたらちょっと浮くと思うんですよ。もし通常のアルバムに入れるんだったら、もう少し生演奏を足したりすると思う。でも今回はカラーに振れる、端から端まで表現できるということで、『SUNNY-SIDE UP』のような曲も作れたし、『心の傘』もとことんロックにいこう!と。あまり林部智史という枠を考えずにやってみようと思って取り組んだので、いろんな冒険ができました。
黄色をイメージ『SUNNY-SIDE UP』
――続いて、黄色をイメージした『SUNNY-SIDE UP』(作詞:藤林聖子 作曲:マシコタツロウ 編曲:出川和平)のお話を。個人的に、藤林さんと言えば『侍戦隊シンケンジャー』の作詞をされた方という印象が強くて、新鮮なコラボにテンションが上がりました(笑)。
●あはははは!
――藤林さんとマシコさんには、どういう経緯でお願いすることになったんですか?
●作家さんのお名前をいくつか挙げていただいた時に、僕もまさに『シンケンジャー』が引っかかったんです。
――えっ、本当に……?
●本当に(笑)。というのも、アルバムの振り幅を広げるために、黄色はアニメっぽい仕上がりにしたかったんです。それが僕の裏テーマとしてあって。だから、現実世界なんだけど、そこからちょっと飛び出した世界観で書いてくださるんじゃないかな?と思って、黄色は藤林さんにお願いしました。
――ちなみに、歌詞と曲、どちらを先にオファーしたんですか?
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