
レコーディングアプローチ
――JMMYさんのパートは〈I said cut the drama ‘fore you get your karma〉というリリックから始まります。要約すると「揉め事はやめろって言ったじゃん、罰があたる前に」という意味ですが、サウンドとテーマを濃くするための、キャラクターと情景描写と捉えればいいですかね、「TALK TO ME NICE」=「俺に敬意を払え、俺様が通るぞ」という強い存在証明を示したアグレッシブな曲のサウンドとテーマを濃くしてく物語の導入部分です。JMMYさんは「重心低めで、貫禄のある感じ」ともおっしゃいましたが、そのあと〈 It sounds like boom, ka boom, you hear〉(=ドーン ドドーンって聞こえてくる )というリリックが特にわかりやすく言葉で言ってる部分ですよね。音ハメというか、サウンドをリリックで強調してて、ベースの音圧とリズムをさらにグルーヴさせてます。音の気持ちよさを強くしているわけですね。ちなみに、リズムの取り方とかはどうですか?「貫禄」というワードからすると、 ちょっと後ろ気味(基準のテンポに対して少し遅れてリズムをとっていく)を意識したような感じだっのかなと。

JIMMY●そうですね、でも僕は基本オンビート(基本のビートに対して前気味や後ろ気味ではなく、そのままのリズムをとる)ですし、今回は最初なので、リズムの基盤を作るという意味でも、まずはオンビートで行って、そのあとに、廉にアクションいれてもらったり、剣くんもチャレンジングなパートだったので、続くメンバーにそれぞれ個性、アクセントをつくってもらうように、そこに繋げられるように意識しました。
――なるほど、ちなみに剣さんのパートがチャレンジングとおっしゃいましたが、僕どこが剣さんのパートなのか、最後までハッキリ自信もって「ここだ!」と言い切れなかったです。MV(ミュージックビデオ)見て、初めてわかりました。
剣●ホントですか?(笑顔)、うれしいです。新しいオレを表現できてましたか! 実は自分のパート、めっちゃ苦戦したんです。先ほどJIMMYが言ったように、デモ音源のボーカルが女性の方だったのですが、それが「マジ、今まで聴いたことない、このバイブス」という感じのボーカルだったんです。それで、どうやって表現しようか、歌おうかっていろいろ考えたんですね、英語の発音の仕方とか調整したり、あれこれ探してたら、「あ、これ、いけるかも!」っていう表現を発見して「いい自分が出せるかも」って思って。

――剣さんのパートは〈do it my way What do you say We go up and down that’s how we make a scene〉という英語歌詞の部分、「自分のやり方でやるぜ」という意思表示している部分ですよね。トラックのビート感も増して、剣さんの声の高さを活かしつつ、さらに圧と切れ味が増してグルーヴする、そういうイメージのパートです。
剣●もともと、地声が高いので、高音パートを歌うことにストレスはなかったです。なので音自体はすぐに出せたんですけど、高いだけではなく、激しい、エネルギーのある高い声を出さなきゃいけなかったので、そこが大変でした。レコーディングの前に、高い声出して、喉を慣らしてから、スタジオに行きました。ちょっと枯れてるくらいでもいいかなと思って、結果、イイ「しゃがれ声」になったと思います。
――そうなんですね。「しゃがれ声」とおっしゃったけど、音源を聴いて「キレイだな」という印象も感じたので、その辺が「イイ、しゃがれ声」ということなのかな?
剣●そうかもしれないです。レコーディングのとき、自分の声がコード(ヘッドフォン、マイク、ミキサーなどレコーディング機材をつなぐコード)を通っていい感じに録音されているのがわかりました(笑)。すっごいマニアックな話になっちゃうんですけど(笑)、NINOさんとのやり取りを通じて、マスタリングの過程で、どんどんクリアになっていって、イイ感じなのが、ヘッドフォンで聴いててわかるんですよね。
――廉さんのラップパートは、ラップ感とメロ感が絶妙なニュアンスでした。

渡邉廉●意外とラップは久しぶりだったので、どういう感じで行こうかってすごく悩んだんですが、英語メインで、すごく勢いのある曲なので、自分の中でキャラづくりを意識しました。声質も、力の入れどころを調整して発声したり、意識しながらやりました。
――〈Better stay up in your lane Don’t cross the line〉というリリックから始まりますが、要するに「一線を越えるなよ、越えたらどうなるかわかるよね」という警告、自己主張、そういうシーンです。それ以上行くと爆発する前の少し抑えたトーン、そういうニュアンスですかね。
渡邉廉●表現が難しいんですけど、今までやってきた自分の日本語ラップのイメージとは、ちょっと違うような雰囲気でレコーディングさせていただきました。自分でしか分わからないかもしれないですが、分かる人にはわかるかもしれない(笑)、今までとは違う廉のラップなのかなと思います。
中西椋雅●今までとは違う聞こえ方をしているのかもしれないです。今回は、声を重ねて録音しているので、それも理由のひとつかもしれないです。通常、僕たちの曲はデータ一本で仕上げることが多いんですけど、今回、かなり重ねて厚みが出ているので、その点でちょっと違う聞こえ方をしているのかもしれないです。
――なるほど。声を重ねると、厚みも出るし、奥行きもでるし、キラキラもするんだけど、匿名性は増すというか。「一人」という認識がちょっと滲むから、そういうのも含め聞こえ方が違うのかもしれない。椋雅さんご自身のパートはいかがですか?
中西椋雅●僕のパート、〈Drop it down jumping in the ring〉という歌詞部分なんですけど、入口(の音程)がすごく低くて、低いところから次の〈You know what’s up〉で急に上がるんですけど、その切り替えが難しいですね。そこは苦戦しましたね。で、そのバックで鳴っている“ガヤ”パートも、けっこう叫んでいて、そういう音と重ねて作ったので、そこもNINOさんのセンスというか、自分たちにはない発想で、テイクを選んでくださっていたので、NINOさんのセンスなんだろうなと思いました。参考になりました。
――椋雅さんのパートもメッセージとして攻撃的な表情を保ちつつ、楽曲の構成的に前後の関係を意識した重要な役割ですよね。いま、音楽的なNINOさんのセンスというお話が出ましたが、タイの方の感覚って、どんなところが日本と違います?
中西椋雅●うーん、そうですねぇ、レコーディングでの録り方も違うし、感情の込め方とかも、基本的には日本と変わらない部分もありつつ、さらに超えてくるというか。ただ、微妙な違いはあるんですけど、クリアに説明してくださるので、やりやすいです。ディレクションのイメージが具体的でわかりやすいし、幅も広いなと感じました。
――ちなみに、この曲には、フィーチャリングということで、タイのアーティストであるTANPさんも登場しています。
中西椋雅●TANPくんは、もともとR&B系を得意とするアーティストで「TALK TO ME NICE feat. TAMP」のようなハードなHIPHOP系ではないですよね。PSYCHIC FEVERのリリックを書いてくれたり、メロディ考えてくれたり、一緒にやっている仲間なので、彼のニュアンスは肌で感じてわかります。そういう彼なりのエッセンスは彼にしかないものなので、彼の世界感と僕らPSYCHIC FEVERの世界感のケミストリーが起こるし、彼だから作れる世界だと思います。
※このインタビューの全編は、次号OUT of MUSIC87(2025年1月30日発売)に掲載です。

※関連記事 → 【特集ハイライト】7人組ダンス&ボーカルグループ PSYCHIC FEVER × 人気ラッパー JP THE WAVY インタビュー OUT of MUSIC 84掲載
PSYCHIC FEVER(サイキック フィーバー)
PSYCHIC FEVERは、LDH JAPANに所属する世界に類を見ない日本のアーティスト集団“EXILE TRIBE”から7番目のグループとして2022年7月にデビューしたKOKORO, WEESA, TSURUGI, RYOGA, REN, JIMMY, RYUSHINの7人組ボーイズグループ。7人それぞれ独自のルーツによる一人ひとり違う個性が魅力となりダンス、ヴォーカル、ラップによるパフォーマンスが化学反応を起こすことからPSYCHIC FEVERと名付けられた。(ファンネームはForEVER)グローバルでの活躍を目指し2022年のデビュー時から日本をはじめ、アジアを中心に活動し、タイ、インドネシア、ベトナムなど各国でアジア最大級のミュージックフェスに出演し観客にインパクトを与え続けている。”IGNITE YOUR DREAMS”をパーパスとして掲げるPSYCHIC FEVERは、そのパフォーマンスで見る者に夢に向かう勇気を与え、その心に火をつける存在となっている。2024年は、アジアのトップへ、そして世界へと、PSYCHIC FEVERの挑戦はさらに加速していく。2024年11月4日最新曲「TALK TO ME NICE feat. TAMP」配信開始。2025年にスタートするUSツアーも決定!