
――ちなみに、歌詞と曲、どちらを先にオファーしたんですか?
●曲です。マシコさんには前回『あの頃のままに』というバラードを書いていただいたんですが、ご自身が出されている楽曲も提供曲も、本当にいろんな曲を書かれる方なんですよね。それこそEXILEにも提供されていますし、一青窈さんの名バラード『ハナミズキ』とか、明確なジャンルで言い表せない楽曲も結構あって。そういうところから、マシコさんもすごく探究心の強い方だと感じたので、松井さんの時とは違い、マシコさんには僕のほうから黄色をオファーしました。
――『SUNNY-SIDE UP』は、作詞をされた藤林さん曰く「料理系男子との週末デートソング」だそうですね。
●後でいただいたコメントを読んだら、そう書いてありましたね(笑)。
――ということは、そのテーマは知らずにレコーディングに臨んでいた?
●特にテーマがどうとかは聞かなかったです。でも、歌詞を読めば一目瞭然ですし、ポップで明るい楽曲なので、僕も楽しく歌おうと思っていました。
――この曲は厚みのあるコーラスも印象的でした。
●心が躍るような曲にしたかったので、コーラスにもこだわりましたね。コーラスのレコーディングって、1人目の声、2人目の声、3人目の声……というふうにチャンネルを増やしていくんですけど、これは過去最多の50……いや、52チャンネル!
――林部さん大集合(笑)。
●今までに出したことのないような音も出しましたし、52人の林部が出てくる歌になりました(笑)。

青の楽曲『もうひとつの未来』
――『もうひとつの未来』(作詞:森由里子 作曲:Minnie P. 編曲:佐藤浩一)は、遠い記憶の中の海に思いを馳せる“青”の楽曲。この曲を作詞された森さんも、多数のアニソンを手掛けてらっしゃる方だそうですね。
●『ドラゴンボール』の主題歌『魔訶不思議アドベンチャー!』を書かれた方ですからね。ただ、『もうひとつの未来』に関しては、アニメ色を強めようと思ったわけではなかったです。楽曲をリリースする際には、コンペといって、作家の方々に作っていただいた楽曲を聴く機会があるんですが、アルバム『Ⅲ』を制作するタイミングで、Minnie P.さんが作られたこのメロディと出会いまして。これはぜひ歌いたい!と思って、その段階で森由里子さんにも詞を作っていただきました。でも、『Ⅲ』には“旅”という裏テーマがあって、タンゴやジャズといった多様な音楽ジャンルを収録したかったので、入れることができず……。大切に1年温めておいた中で、今回“青”の楽曲としてリリースすることが決まり、みんなでこの曲を青色に染めようと、再び動き始めました。
――青の曲と言っても、<今も碧く輝く>とあるように、深海の色のような青が描かれていますよね。その色にはどんなこだわりが?
●青、碧、蒼など、“青”にはいろいろな表現がありますけど、その漢字によって色の違いがあって。碧はどちらかというと、読みの通り、緑に近いような青だと思うんですよね。斉藤さん(ライター)のお名前もそうですけど(笑)。
――碧でみどりですからね(笑)。
●だから、あえて碧と表現することで、空の色を反射している色とか、深い海の色とか……そういう景色を浮かび上がらせようとしているのかなって。僕のほうから「碧で」ってお伝えしたわけではなかったんですけど、漢字の違いから、そういった色へのこだわりを感じました。
――アルバム特設サイトのコメントで、Minnie Pさんは「どこまでも透明なブルー、その高音が美しく繰り返されるメロディが書きたいと思い、何度も何度も林部さんの声を心で繰り返してこの曲ができました」とおっしゃっていますが、実際のレコーディングはいかがでしたか?
●『もうひとつの未来』は、作家さんに立ち会っていただきながら歌を入れていったんですけど、結構時間がかかっちゃいましたね。メロディの音の移動が一番激しい歌なので、歌い慣れるまでは難しかったです。
――イントロのエレクトリックピアノも、その時に演奏して録ったんですか?
●いや、あれは打ち込みです。楽曲の印象として、僕はこの曲に韓流っぽさも感じていて。歌謡曲ではないですけど、懐かしさも感じるし、洋楽っぽさもあるな、みたいなイメージがあったんですよ。なのでアレンジも、初めは打ち込みを入れない予定だったんですけど、それだと今まで通りの僕の作り方になってしまうので、アレンジャーの佐藤浩一さんに「できるだけ洋楽の作り方に寄せたいです」とお伝えして。打ち込みのローズ・ピアノから始まり……っていうアレンジに仕上げていただきました。
――(吉田編集長)あのエレピ、左右のパン(音をステレオで左右に振り分ける)がすごいよね。
●そう、あれが昔の洋楽のやり方なので、「分かりやすいくらい左右に振っちゃってください」ってお願いしたんです。
――(吉田編集長)いや、わかりやすすぎというか、そこまでやるのかっていうくらいやってる。
●あはははは。
――リリックビデオの林部さんのように、海辺を歩きながらイヤフォンで聴くのがベストなんじゃないですか?
●そうですね。……まぁ、あのリリックビデオは、40℃の炎天下で撮ってますけど(笑)(リリックビデオ撮影時、すごく暑かった)
――あんなに涼やかな顔してるのに!?
●ジャケット写真も同じ時に撮影したんですけど、めっちゃ汗が吹き出てきたので、何回も汗を拭きながら撮影しました。
“緑”をイメージした『Omoide』
――“緑”をイメージした『Omoide』(作詞:鮎川めぐみ 作曲:松本俊明 編曲:岡崎雄二郎)は、高橋真梨子さんや大竹しのぶさんの楽曲の作詞を多数手掛ける鮎川さんと、MISIAさんの『Everything』やJUJUさんの『この夜を止めてよ』などを作曲されている松本さんの楽曲です。こちらはどういう経緯で生まれましたか?…
この記事の続き(1万字インタビュー、8ページ特集)、撮り下ろし写真は『OUT of MUSIC 83』に掲載です。ご購入ご希望の方は、または下記画像リンクからお求めください。(また全国書店、CDショップ、ネットショップでのお取り寄せも可能です)
