
自分たちの感情、内心をストレートに突き刺す歌詞

和楽器を取り入れたHIPHOPトラックをTHE RAMPAGE独自の音楽に昇華した「蜘蛛の糸」。「戦闘力強めの楽曲」(川村壱馬)とも表現したこの曲が放つ「圧」のような存在感、奥深さは何処から来るのか。まず言及したいのは、ラップ、リリックだ。和太鼓と三味線のビートに乗せて、冒頭からさまざまなスタイル、声質のラップが登場する。ラップパート16小節のうち、最初の8小節は、冷静に狙いを定めているかのような語り口のラップ。少し枯れて尖った質感の声と三味線サウンドが刻むビートの絡みが気持ちを煽り、繰り出される言葉たちは〈静寂の中響くVibration〉〈数え切れないTraps, Enemies〉といったリリックで「蜘蛛の糸」の世界観、感情をより濃く描いていく。続く8小節の前半4小節で一変、クセのある、少しシャウト気味に語尾を上げたラップで「おっ」と聴き手に驚きを与えつつ、そして残り4小節では、リズムでバリエーションを作って、さらにそのリズムも崩しながら、聴き手を翻弄するかのように変幻自在のフロウが繰り広げられる。〈容赦ないWho’s on top?〉〈糸が描くのは“Do or Die”〉〈傷から流れる真っ黒な血を〉というリリックで、ヤバい状況下での生存競争という情景を描いていく。LIKIYAは「歌詞が攻めているし、自分たちの感情、内心をストレートに突き刺している、ズバリ言っている」と歌詞への共感を口にしている。歌詞、サウンドも含めた「自分たちらしさ」をメンバーが強く感じていることが、THE RAMPAGEと「蜘蛛の糸」とのシンクロを高め、楽曲の説得力を濃くし、聴き手にリアルで深い印象を与えている。筆者は個人的見解として、川村壱馬の声について「清らかで美しい」という印象を抱いているが、川村壱馬は「ラップのアプローチが、いままでやったことのないようなアプローチもあって、バリエーションをつけることができた」と今回の制作を振り返る。筆者はこの取材時点では、ラップを担当しているのが川村壱馬一人だったということに全く気が付いていない。「クセのある、少しシャウト気味に語尾を上げたラップ」について「これは、誰が担当したのか?」とメンバーに質問してしまったほどだ。それについてLIKIYAも「僕らも最初聴いたとき、誰だか分らなかった。デモ音源かと思った」と話している。こうした驚きもTHE RAMPAGEの音楽の魅力、独自性、その進化を物語っていると筆者は思う。
続くメロディパートで、THE RAMPAGEが誇るスリボ(スリーボーカル、ボーカル三人)のふたり、RIKU、吉野北人も登場となる。