
甘い恋なんてきらい…『ユイカ』1万 1,000字 インタビュー 先行エディット版
ボーカルアプローチ
――冒頭でも触れましたが、この「ローズヒップティー」は、ドラマ「君がトクベツ」(毎日放送)のOP曲として書き下ろされた楽曲です。
●自分が好きだった作品に関わることができて、とても嬉しかったです。「君がトクベツ」は、もともと原作(作者・幸田もも子の漫画作品)も好きで読んでいて、それが映画化され、その続編としてドラマ化もされるということで、原作ファンとしては、実写で映画化されるということだけでもうれしかったのに、ドラマ化もされて、さらに、自分の曲をOP曲として起用していただけたというのが、ホントに嬉しいです。実写のドラマ作品のOP曲という点でも嬉しかったですし、一歩成長できたかなって思うし、それがわかるような曲を書きたいと思っていました。いままでと違った雰囲気の歌を書きたい、という思いもありました。
――その「ローズヒップティー」ですが、ここで一旦、曲の概要を整理すると、Aメロでは〈甘いのがきらい ピンクもきらい 笑った顔も甘いからきらい〉という意外性ある歌詞から始まり、〈私にはいらない 恋とかいう甘い類のやつ〉と、「恋はきらい」という女の子を強く印象づけています。続くBメロでは〈貴方の甘い顔も 貴方の甘い声も 全部全部 きらいになれたらいいのに〉と、「恋なんてきらいだけど、好きになりかけている?」という心の動きが歌われます。そして続くサビでは、「すき」という自分の気持ちを認めたくないと抵抗を見せつつ〈甘そうなもの全部きらいだけど 例外もあったっていいんじゃない?〉と、すきになってしまったことを言いつつ、また、その言い訳もしています。そして、〈ローズヒップティーとかすきだし あれ本当は甘くないけど あぁ 好きになっちゃった!〉と、その言い訳の具体例として「ローズヒップティー」が出てくるわけですよね。サビはちょっとファルセットに近いニュアンスの高音パートで、感情の高まり、セツナさも表現されています。
●この女の子は恋のような甘い類のものはきらいだけど、恋に落ちちゃった。それをなんとか正当化しようとしているんですよ。
――「きらい」と言った手前。
●ハッキリ言う子なので、言い切った手前(笑)。
――この「ハッキリ言う女の子」のキャラクターを壊さず、恋に落ちるまでの動きを歌っているわけですが、この主人公の気持ちの動きを表現するためのボーカルアプローチという点では、どんなことを意識しましたか?
●一番のAメロに出てくる感情の「きらい」という歌詞が、二番のAメロでも出てくるんですけど、同じ「きらい」という歌詞でも感情的には変化していて、一番のAメロのときは「あなたなんて知りません! きらいっ!」みたいに結構強気なんですけど、二番のAメロから、ちょっと、もじもじしているというか、気持ちが「すき」のほうに動きだしているので、そこに差が出るように意識しました。
――そのニュアンスの違いについて、歌詞で見ると、一番では〈私にはいらない 恋とかいう甘い類のやつ〉という表現だったものが、〈私にはいらない はずだったのに。〉と変化していますよね。
●そうです。
――そして歌詞もそうですが、サウンド的にも1Aのコードは、ベースの音階が1小節ごとに上がって、始まり感、気持ちの高まり感のようなニュアンスの展開に対して、2Aは、ベースが抜けるので、浮いたような状態のような、そんなイメージの違いがあります。
●サウンド的には、もう「すき」になっちゃってる感じですよね(笑)。
――浮遊感というか、「きらい」と口では言いつつ、心では「すき」というか。
●そうですね。「すき」だけど「きらい」って言ってるみたいな、ひねくれた感じをどう表現しようか考えました、それが結構あからさまな方がいいなと思って。ホントにきらいだったら「あ、きらい」みたいな、興味ない、あっさりとした冷たい感じになると思うんですけど、そうではないので。「もぅ、キライっ、プンプン」みたいな感じを出したくて(笑)。多分、歌っているとき、私もそんな顔をしていた気がします(笑)。「プンプン」感が出るように(笑)。冷たいんじゃなくて「ふぅ~ん」みたいな、猫みたいな感じかな?
●この「ローズヒップティー」は、ドラマ「君がトクベツ」(毎日放送)のOP曲として書かせていただきました。これまでさまざまな曲を書いてきましたが、自分が書いてきたラブソングは「男の子を“すき”って思う気持ちが溢れて止まらない」といった曲が多くて。でも今回はドラマの主人公にも合わせて、女の子が結構ツンツンしているというか、「すき」って素直に認めないところをドラマからピックアップして、曲にできたらいいなと思って制作しました。普段の私の曲とは違って、クールな感情も感じる曲だけど、サウンド感的に明るいポップな面もあるので、いい感じにクールさとポップさを調和できたなって思っています。
――『ユイカ』さんのキャラクターあふれるボーカルも、インパクトと意外性もある歌詞も印象的ですよね。
●ラブソングですけど、最初から「きらい」を連発してます(笑顔)。
――――まさに、疾走感あふれるポップなギターロックサウンドに乗せて、曲頭、Aメロから〈甘いのがきらい ピンクもきらい 笑った顔も甘いからきらい〉とリズミカルに歌っていますよね。
●この曲を制作するにあたって、一番最初に思ったのは、ラブソングだけど「きらい」というワードを入れたくて。
――へぇ~。
●「きらい」って、ラブソングであまり見ないかな? と思ったんです。「すき」ってことを伝えるために、「きらいなのに、すき」のほうが、ただ「すき」と言うより大きいなって思ったし、「“きらい”なのに、どうしても“すき”になっちゃう」みたいな気持ちを表現したかったんです。なので、まず「きらい」というワードを入れよう、というころから決めました。そして、Aメロド頭から「きらい」って言いまくろうと(笑顔)、そう思って作りました。
――サウンド感はポジティブなのに「きらい」を連発しているというのも感覚的におもしろいなって感じました。
●そうですね。この曲の女の子は、イヤなのをイヤとハッキリ言う女の子というイメージをAメロからつけたかったんです。まず「きらい」ですと。でも、気持ちが揺れてて、最初は認めないけど、いつの間にかどんどん好きになっていく、どんどん気持ちが動いていく感じを、曲のなかで表現したいと思いました。
――なるほど。
●サウンドは、Aメロはゆったりしたイメージで、Bメロから少し疾走感も出て、サビでしっかり全力疾走という感じにしたかったので、それをイメージして作りました。
――『ユイカ』さんのキャラクー感あふれるボーカルも魅力ですよね。女の子の性格、気持ち、その動きが、聴き手に自然に伝わります。
●この女の子は「きらい」って言えるくらいなので、もともと物事をハッキリ言えるタイプの子をイメージしました。だけど、そんな子の気持ちがひっくり返るくらいステキな男性が表れた、すきな人を見つけちゃった、みたいな展開です。恋したくないけど、恋に落ちちゃったというところを表現したくて、主人公は気が強い女の子をイメージしました。

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